CXの観点で音楽業界のビジネスモデルを考えてみる
現在の音楽のビジネスモデルについて
みなさん、音楽は聴かれますか?
例えば移動中にイヤホンで。時には車の中で。または家にいるときに。ボーリング場やゲームセンターなどのレジャー施設。あらゆる場所で音楽を聴くことがあると思います。
音楽はジャンルも幅広いので、クラシックを聴く人もいれば、JAZZ、ロック、POPなど好みもわかれてきますし、歌手やミュージシャンの好みも大きいと思います。
最近はコロナ禍になってきましたが、ちょっと前までは体験消費(コト消費)が注目され、広い場所でのコンサートや野外フェスも注目を集めました。コロナ禍によって大人数で集まることが難しくなったことで、オンライン配信という形でライブを閲覧するようにもなりましたが、今回は音楽についてCX『Customer Experience(顧客体験)』の観点で考えてみたいと思います。音楽業界のビジネスモデルはCXとも非常に親和性の高いものと言えます。
CDは売れなくなったと言われている時代
音楽と言えば、少し前まで(私は今もですが)は、CDを購入して聞くことが主流でした。
CD不況という言葉を聞いたことはありますか?CDが売れたピークは1998年であり、市場全体では音楽ソフトの売上が6000億という規模でしたが、年々CDの売上も減少していき、2020年では音楽ソフトの売上が2000億を切ったと言われています。
なぜ人はCDを買わなくなったのでしょうか?単純に昔の方が良い曲が多かったからでしょうか。それも一理はあるかもしれませんが、音楽を聴く形に変化が起き続け、特に2000年以降はインターネットの普及で気軽に音楽を聴く人が増えていったことが要因と考えられます。
WinMX(ウィン エムエックス)やWinny(ウィニー)の存在も大きいですし、MXファイルで聞く、iPodなどの出現も大きいと思います。またYouTubeの存在も大きいのではないかと思います。
2005年からは音楽配信の売上も計測されるようになりましたが、着々と増加傾向でしたが、昨今のストリーミング配信のサービスも出始め、アラカルト方式(1曲ごとの販売方式)は成長が鈍化したとも言われています。
あなたは音楽の何にお金を払ってますか?
好きな曲をいつでも好きなタイミングで流せるSpotify、Apple Music等のストリーミング配信や、TikTokやYoutTubeのように無料でも音楽を聴けるようになったこの時代。業界全体では音楽業界は縮小傾向と言われているものの、常に売れ続けている人たちもいます。
例えば、B’zやMr.children(ミスターチルドレン)、GLAYなんかは90年代から売れ続けています。彼らは常に最高の曲を発表しているから売れているのでしょうか。
(もちろん素晴らしい作品を作り続けているからもありますが…)おそらく、私が思うにはファンの存在が大きいのではないでしょうか。言い換えれば「●●を好きな人」。「熱狂している人」、「信者」です。
例えば、ミスチルの曲は好きなんだけど、ライブに行きたいと思わない。ミスチルは好きじゃない。という人は仮に1~2曲は好みの楽曲があって購入することはあったとしても、他の曲まで聴こうとは思いませんよね。
すなわちミスチルが好きだから次の作品も聴いてないけど買いたい、楽しみである、待ち遠しいという「ファン」という存在がビジネスとして大きく起因しているのではないでしょうか。その為、ファンからすれば彼らが大規模なツアーを開催したら、「楽しみだ」「お金を貯めなきゃ」という気持ちが働き、彼らに投資します。
少し前ではAKB商法という言葉も広まりました。「オタク」と言われる熱狂的なファンが1つの作品のCDに対して大量に購入することです。彼らは新曲の良し悪しでCDを購入するのではなく、握手券というファンが推しのアイドルと直接交流を持てる場にお金を投資しているのです。
つまりは昨今の音楽業界ではCDというモノを買うという行為よりも、どういった手段で音楽を聴くか、またはコレクションにしたいのか、どういった体験を得られるのかなど「コト消費」にシフトしたのではないかと考えられます。
コロナ禍におけるCX設計について
コト消費になったことでライブや大型フェスなどが注目されるようになりました。人気アーティストだと年間の総動員数は100万人以上。チケット代が数千円×動員数。またツアーグッズなどを考えると凄まじいビッグビジネスです。
これがコロナ禍になったことで人が集まるということがなかなか難しくなってきました。これにより配信ライブという形が注目されるようになりましたが、あくまで画面越しですので、最初は珍しくて良かったけど、時間が経つにつれて、刺激が足りなく、配信ライブの収益も落ち着いたと言われています。(極論、DVDで観るのと何が違うんだという意見も多いようです。)
最近では新しい取り組みとして配信ライブのチケット購入者にスペシャルチケットが後日送られてくる。YouTubeなどのライブ配信で直接ファンの質問に答えるなど、オンリーワン的なコミュニケーションが注目されるようになってきました。
とはいえ、ライブにつきましてはリアルに勝るものはないと言われておりますが、デジタル上では「自宅でも閲覧できる利便性」や実際に行けないけど参加したことの優越感などオンリーワン的な満足が着目されています。
withコロナでリアルな体験が完全には戻り切れていない現在において、貴社のサービスにおきましてもデジタル上でのCX設計について考えてみるきっかけとなればと幸いです。