はじめに
マーケティングリサーチにおいて、正確なデータ収集と分析は意思決定において不可欠です。
その中でも、「マトリクス回答形式」は効果的な手法の一つとして広く利用されています。
今回は、「マトリクス回答形式」の概要から有益性、利用方法の事例、留意点…などについて解説します。
「マトリクス回答形式」とは?
マトリクス…というキーワードを聞いて最初にSF映画を思い浮かべたあなたはきっと私と同じ氷河期世代ですね。
ビジネスシーンでよく耳にするマトリクスですが、一般には「数学の行列」のことを指し、マーケティングで用いられる際には「マトリクス図」の意味となることが多いです。
あるテーマについて細かく内容を掘り下げていく際に、関連する情報を縦軸と横軸に分類することで、それらの相関関係やポジショニングを捉えることができる優れものです。
マーケティングリサーチでもマトリクスは活躍します。それが「マトリクス回答形式」です。
「マトリクス回答形式」は、複数の質問を一つの行列状のテーブルにまとめ、被験者が選択肢に対して評価や選好を示す手法です。
一般的には、質問の行と選択肢の列が交わるセルに評価が記入されます。この形式は、複数の質問に対する一貫した評価を可能にし、データの分析がしやすくなります。
下記は当社のリサーチャーが作成した「マトリクス回答形式」のサンプル(R)です。
「マトリクス回答形式」の有益性
「マトリクス回答形式」の有益性は次の3点が挙げられます。
(1)効率的なデータ収集
複数の質問を一つのテーブルにまとめることで、被験者に質問への回答を簡素化し、効率的なデータ収集が可能となります。
(2)一貫性の確保
質問の形式や順序が一貫しているため、被験者の回答も一貫性を持ちやすくなります。
(3)データの可視化が容易
行列状のテーブル形式は、データの可視化や分析が容易であり、傾向やパターンを素早く把握することができます。
「マトリクス回答形式」の利用方法の事例
次に「マトリクス回答形式」の活用事例を説明します。
例えば、製品やサービスの評価調査や市場調査において、以下のような形で「マトリクス回答形式」が活用できます。
製品評価調査
ある企業が新しいスマートフォンを市場に投入する際、消費者のニーズや好みを把握するために「マトリクス回答形式」を利用しました。
質問項目には価格、デザイン、機能、バッテリー寿命などが含まれ、被験者はそれぞれの項目に対して「非常に満足」「満足」「普通」「不満」「非常に不満」のような評価を行いました。この結果を集計することで、製品の改善点や強みを把握し、市場投入に向けた戦略を立てることができました。
広告キャンペーンの効果測定
ある飲料メーカーが新商品の広告キャンペーンの効果を評価するために「マトリクス回答形式」を利用しました。質問項目には広告の内容、印象、覚えやすさ、購買意欲などが含まれ、被験者はそれぞれの広告に対してポジティブからネガティブまでのスケールで評価しました。これにより、どの広告がより効果的であり、消費者に最も訴求力を持っているかを把握することができました。
新商品開発のニーズ調査
ある食品メーカーが新商品の開発に向けて、消費者のニーズや嗜好を把握するために「マトリクス回答形式」を用いました。質問項目には味、香り、価格、パッケージデザインなどが含まれ、被験者はそれぞれの項目に対して好みや重要度を評価しました。この調査結果をもとに、新商品の開発やマーケティング戦略を立案することができました。
これらの事例では、「マトリクス回答形式」が効果的なデータ収集と分析を可能にし、製品開発やマーケティング戦略の策定に役立っています。
「マトリクス回答形式」の留意点
マトリクス形式のアンケート設計には、いくつかの留意点があります。以下に重要なポイントをいくつか示します。
明確な目的の設定
マトリクス形式を使う前には、アンケートの明確な目的を定めます。何を調査したいのか、何を理解したいのかを把握し、それに基づいて質問項目を選択する必要があります。
簡潔で明確な質問
被験者が質問内容を理解しやすくするために、質問は簡潔で明確にしましょう。言葉の選択や文の構造に注意を払いましょう。
一貫性の確保
マトリクス内の質問は、一貫性を保つように設計します。質問の文言や選択肢の表現がばらばらだと、被験者の混乱を招く可能性があります。
バランスの取れたスケール
スケールの選択は重要です。適切な範囲のスケールを使用し、選択肢がバランスよく並んでいることを確認しましょう。
例えば、5段階評価や10段階評価が一般的ですが、適切なスケールは調査の目的や質問の性質によって異なります。
オプトアウトの提供
マトリクス内のすべての質問に回答することが難しい場合、オプトアウト(受け取りを受信者が拒否すること)のオプションを提供しましょう。
被験者が不適切と感じる質問には回答を強制しないようにします。
レイアウトへの配慮
マトリクスのレイアウトは、見やすさと直感的なナビゲーションを確保するために重要です。選択肢がきちんと整列しており、質問と選択肢が明確に区別されていることを確認しましょう。
テストと改善
マトリクス形式のアンケートは、テストやパイロット調査を行って改善することが重要です。被験者のフィードバックを収集し、問題点や混乱を解消するための調整を行いましょう。
これらの留意点を考慮しながら、マトリクス形式のアンケートを設計すると、効果的なデータ収集と分析が可能となります。
スマホでは要注意?!
近年アンケートは、WEBからの回答が主流となりましたが、さらにはスマートフォンからの回答割合が年々増加しており、回答デバイスの性質を考慮して調査票を設計することも重要になりました。
特に若年層はスマートフォンからの回答の比率が高く、スマートフォンユーザーに配慮した調査票設計が求められますが、実はこの「マトリクス回答形式」は避けられる傾向にあります。
スマートフォンの画面では一覧表示しにくく、特に、大きなマトリクス形式の設問では横・縦のスクロールが必要となるため、初期表示で確認できる項目が選択されやすくなる性質があります。回答に手間のかかる設問では離脱率も高まってしまいます。
情報の整理・伝達で非常に有効な「マトリクス回答形式」ですが、使い方を間違えるとマイナス面の影響が際立ってしまいます。
そこで前掲しました「レイアウトへの配慮」が必要になります。調査対象やデバイスに配慮し、簡潔な文章、見やすさ、直感的なナビゲーションを確保した設計にする必要があります。
まとめ
「マトリクス回答形式」は、マーケティングリサーチにおいて広く利用される効果的な手法の一つです。その一方で、適切な設計と注意が必要であり、問題点に対処する必要があります。マーケティング活動の戦略策定や意思決定において、「マトリクス回答形式」の活用は重要な役割を果たします。
とはいってもどのように設計していけばいいのかお悩みの方は、当社のマーケティングリサーチをぜひともご活用ください。効果的な「マトリクス回答形式」をご提案させていただきます。