いまさらきけない?ウォーターフォールとアジャイルのメリットデメリット
はじめに
ソフトウェア開発において、多くの方が耳にしたことがあるであろう「ウォーターフォールモデル」と「アジャイルモデル」。これらは現場でも広く活用されていますが、具体的に説明するとなると、わかりやすく伝えることが難しい場合もあります。そこで、今回はこれらの二つの開発手法に注目してみました。
ウォーターフォールとは?アジャイルとは?
ソフトウェア開発において2つの主要なアプローチの方法です。ウォーターフォールは従来的な手法であり、アジャイルは近年注目されている方法論です。ここで少しおさらい。
ウォーターフォールとは?
語源:「ウォーターフォール(waterfall)」という言葉は、英語の「water(水)」と「fall(落ちる)」という単語から派生しています。自然界での滝などを指す言葉で水が高所から垂直または急斜面を下って落ちる様子を指していて、システム開発では「ウォーターフォールモデル」と呼ばれ、プロジェクトの進行が段階的に分割され、各段階が直列的に実行され、一つの段階が完了すると、次の段階に進むという順番で進められる手法を指します。この手法では、各段階が直列的に進むため、次の段階に進む前に前の段階が完了している必要があります。
ウォーターフォールモデルの主な流れ
1.要件定義
2.設計
3.実装
4.テスト
5.リリース
6.運用・保守
アジャイルとは
語源:「アジャイル(agile)」という言葉は、ラテン語の「agilis(敏捷な、機敏な)」に由来していて、ソフトウェア開発やプロジェクト管理の分野で広く使用される用語であり、素早く柔軟に変化に対応する能力や手法を指します。従来の大規模な計画や文書化に依存する代わりに、小さなタスクや目標を設定し、逐次的に進めながらフィードバックを得ることに重点を置きます。
アジャイルモデルの主な流れ
- プロジェクト計画と要件定義
- ユーザーストーリーの作成
- スプリント※の計画
- スプリント※の実施
- スプリント※レビューと反省
- スプリント※の改善
※スプリント:アジャイルソフトウェア開発における時間ボックス(期間)のことを指します。スプリントは通常、2週間から4週間程度の短い期間で行われます。開発チームが特定の目標を達成するために取り組む一連の作業を包括します。その期間内に、プロジェクトの要件に基づいて設計・開発・テストなどのタスクを進め、成果物を完成させます。
ウォーターフォールとアジャイルのメリットデメリット
先に説明してきたようにウォーターフォールモデルとアジャイルモデルは異なるアプローチをしており、それぞれにメリットデメリットがあります。
ウォーターフォールモデル | アジャイルモデル | ||
メリット | デメリット | メリット | デメリット |
明確な計画と予測 プロジェクトの最初に要件定義、設計、開発、テスト、展開などのフェーズが明確に定義されるため、プロジェクトの進行状況や納期を比較的正確に予測することができます。 | 変更への対応の困難さ ウォーターフォールモデルでは、各フェーズが直列に実行されるため、一度次のフェーズに進んでしまうと、前のフェーズに戻ることが難しくなります。変更要求が発生した場合、時間とコストがかかることがあります。 | 柔軟性と変更への対応 アジャイルモデルでは、短期間のイテレーションを通じてソフトウェアを開発していくため、変更要求に対して柔軟に対応することができます。途中での要件変更や改善が容易です。 | 予測の困難さ アジャイルモデルでは、プロジェクトの進捗や完了時期を正確に予測することが難しい場合があります。変更要求や新たな要素の追加があるため、プロジェクトのスケジュールが柔軟に変動する可能性があります。 |
ドキュメント重視 ウォーターフォールモデルでは、各フェーズごとに詳細なドキュメントを作成することが一般的です。これにより、開発チーム内外でのコミュニケーションや知識共有が容易になります。 | リスク管理の困難さ ウォーターフォールモデルでは、リスクの特定や対処策の検討が前もって行われるため、後のフェーズでのリスクへの対応が困難です。リスクが発生した場合、プロジェクトに大きな影響を与える可能性があります。 | 顧客との継続的な関与 アジャイルモデルでは開発チームと顧客(利害関係者)が継続的にコミュニケーションを取りながら、進捗や優先順位を定期的に確認することが不可欠になるため、これにより、顧客のニーズをより早く反映することができます。 | ドキュメントの不足 アジャイルモデルでは、ウォーターフォールモデルほどの詳細なドキュメントを作成することが少ない場合があります。これにより、後からプロジェクトに参加するメンバーや将来の保守作業を行うメンバーにとって、プロジェクトの理解が難しくなる場合があります |
制御と品質保証: 各フェーズの終了時にテストが行われるため、品質保証が強化されます。また、各フェーズの進行を管理することで、プロジェクトの進捗を容易に把握することができます。 | クライアントとの関与 クライアントの関与は主に要件定義や最終的な成果物の確認などに限られます。そのため、途中でクライアントのニーズやフィードバックを反映することが難しくなる場合があります。 | 高品質なソフトウェア アジャイルモデルでは、各イテレーションの終了時にテストが行われ、品質が確保されます。短いイテレーションで継続的な品質改善が行われるため、最終的な成果物の品質も向上が期待できます。 | 開発チームの経験とコミュニケーションの重要性 アジャイルモデルでは、開発チームの経験と良好なコミュニケーションが重要です。適切な計画やタスクの見積もり、チーム全体の協力が必要です。経験不足やコミュニケーションの問題がある場合、プロジェクトの成功に影響を与える可能性があります。 |
結論
ウォーターフォールモデルとアジャイルモデルは、プロジェクトの要件や特性に合わせて選択することが必要となります。ウォーターフォールモデルは要求仕様が固定されており、プロジェクトのスケジュールや予算の予測が重要な場合に適しています。一方、アジャイルモデルは変化や要求の変更に対応する柔軟性が求められ、顧客との継続的な関与と品質改善が重要な場合に適しています。
ウォーターフォールモデルが適しているプロジェクト
開発しているシステムの規模が大きく、作業員の調整やスケジュール確保が必須となる大規模プロジェクトに適しています。
アジャイルモデルが適しているプロジェクト
ゴールが明確でなく開発途中で仕様変更が見込まれる優先度が変更するプロジェクトなどに適しています。計画が進捗具合に応じて変更していくような柔軟なプロジェクトに適しています。