リテールメディアとファーストパーティデータの可能性
近年、プライバシーや個人情報保護の観点から、サードパーティークッキーを規制する動きが強まっています。
サードパーティークッキーは、消費者が訪問したサイトの利用データを広告会社などの第三者が横断的に取得している情報で、広告配信などで活用されてきました。こうしたデータを消費者の承認を得ずに収集して活用している点が問題視されはじめ、利用に制限がかかり始めています。この変化は、従来のデジタル広告の仕組みにも大きな影響が出ており、そうした状況の中、注目が集まっているのがファーストパーティデータの活用です。
ファーストパーティデータとは、第三者を経由せず、企業が自社で直接収集したデータです。具体的には、サイトからの問い合わせや資料請求で集めた個人情報や顧客の過去購買データや行動履歴などが該当します。サードパーティークッキーの利用が制限される中で、顧客の購買データや行動データなど、質の高いファーストパーティデータを収集している小売事業者に注目が集まっており、リテールメディアが話題にあがることが増え始めています。
リテールメディアは、小売事業者が持つ顧客の購買データや行動データ等のファーストパーティデータを広告配信などに活用できることが特徴で、広告を出稿している事業者にとって、サードパーティークッキー利用が制限される中で、顧客とつながる新たな手段となり得るため、高い価値を認められ始めています。
なぜ、小売業者のファーストパーティデータが注目されているのか?
小売業者のファーストパーティデータが注目され始めた理由は、2つあります。
第一に、店舗での売上の約9割はまだオフラインによるものだからです。このオフラインのデータは、従来はPOSデータという形で活用されてきました。
POSデータとは、Points of Salesの略で、レジでの商品販売時に記録された購入商品、販売個数、価格、利用店舗、購買時刻などのデータです。商品がどのように売れたのかを分析するデータで、商品を軸としたデータです。このPOSに、ポイントカードなどの顧客IDを紐づけたデータが「ID-POS」と呼ばれており活用されてきましたが、IDを紐づけられるデータが限られていて、十分なデータが取れないことが課題でした。
そうした状況から、ここ最近の変化として、ECの活性化、ネットスーパーの普及、電子決済の普及、CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)の整備などが進み、小売業者のファーストパーティデータが活用しやすいものになってきました。
カスタマーデータプラットフォームとは、企業が持つ顧客の情報を集約し統合するデータベースで、ECでの利用実績、アプリの会員情報、ポイントカードの会員情報、POSデータの購買情報などのデータを統合して管理できるように整備したインフラです。
上記のような、大量データを扱うためには、従来はセキュリティ対策を万全に整えたサーバ環境が必要で大きな設備投資と維持費がかかる設備でした。
利用しやすく廉価でセキュリティ対策と整えることができるクラウドサーバなどの環境が整い、ローコストで大量データを蓄積して維持管理し、データ分析を高速できるようになったことも近年、急速に注目を集めるようになった理由でもあります。
小売業者のファーストパーティデータは、データの網羅率が向上したことと利便性が鷹股こともあり魅力的なデータとなり始めました。
第二に、サードパーティークッキーが取得できなくなった際に、ファーストパーティデータを活用することで、顧客が求めるレベルまでパーソナライズされた広告を提供することができる点です。
リテールメディアは、広告を配信する環境が販売と同じであることが魅力で、プライバシーへの配慮をした上で、収集した情報に基づいたターゲティングが可能なため、購入意欲の高い顧客に、効果的なパーソナライゼーションを提供することができるのです。