バックキャスティングとは
バックキャスティングとは、最初に理想の未来像を描き、次にその未来に向かうために実現するためのシナリオを未来から現在に遡って作成する思考です。特に、「大きな変化」が求められる課題に対して活用する手法とされています。
バックキャスティングは、ビジネス上で非常に有効な思考法です。なぜなら、目的から順番に思考を進めていくため、目的の軸にブレなく答えに辿り着くことが出来るからです。
例えば、「会社をどんな状態にしたいか」や「どんな経営がしたいか」、「どんなお客様に来て欲しいか」など、理想とする未来を思い描き、それに向けてどんなアプローチをしていけばいいのかを考え、今ある課題を解決していく流れをとっていきます。
現代社会のビジネス社会での活用法としては、DX推進や組織改革など不確実性が高く、正解が存在しない課題やテーマに対して使用されることが多くなっています。
また、現在話題性の高いSDGsの実践にも有用性の高い思考とされており、その持続可能な開発目標に対して、そこからの逆算で今やるべきことを明確にし、対策していくことが可能だからです。
今回は経営観点でも重要な「バックキャスティング」について、もう少し深く触れていきたいと思います。
バックキャスティングの特長
主にバックキャスティングは10年や20年にわたる長期のありたい未来の実現に使われる思考法で、「このままではいけない!どうにかしないと。」といった根本的な課題解決に使われます。この「どうにか」を考えていく手法です。
歴史は意外に長く、50年前くらいに遡り、1970年代から環境問題などを中心に徐々に広まってきたものです。
メリットとしては、対策しようと思うにも何から手を付ければ良いのか…というような無理難題・壮大な課題に対し、具体策や正解がすぐにはわからないものや実現が難しいのではないかと思われる問題を解決する時の使用に適しています。これまでになかった飛躍的なアイデアや斬新なアイデアなど、考えもしなかったような新しい発想が生まれやすいのが特徴です。
選択肢に制限がなくなるため、課題に対して一緒に取り組むことで目先の利害関係を超えたパートナーシップも築くことができるとも言われています。
一方で、難題に取り組むための思考のため、解決方法に不確実性が高く、実現困難のものも出てくる危険性があります。また、理想の未来像がしっかりと共有できないと結束することができないため、短期的なアクションには向きません。今、話題性のある思考だからといって短絡的にこの発想・思考を用いるのは注意が必要になります。
対照的な思考「フォアキャスティング」について
フォアキャスティングは以前から存在していた考え方であり、多くの企業や組織が取り入れている手法です。例えば、過去のデータを活用してこれからの気象を予測する天気予報、過去の売上実績から来期の目標を設定することなど、恐らく、当たり前のように行っている思考です。日常生活に根付いた思考といっていいですね。
「未来を起点」に考えるバックキャスティングとは対照的で、「現在を起点」に解決策を見つける思考法です。短期的で、目の前にある課題解決や目標実現に適しています。
現在のリソースや過去の経験・情報が重要で、周囲からの理解度・納得度が高く、短期的な実行力があるのがメリットです。
逆に、過去の経験・発想から考えていく為、未経験で不確実な未来の計画に向いておらず
短期的には効力があるものの、根本的問題の解決にはならないことがあるのがネックになります。方向性と大きなズレがあっても気づきにくく「前もうまくいったから大丈夫」と油断しがちなため、選択肢に偏りが見られたり、制限されやすいので注意が必要です。
「バックキャスティング」と「フォアキャスティング」の使い分け
バックキャスティングとフォアキャスティングのメリット・デメリットをご紹介してきましたが、大前提としてご注意していただきたいのが、バックキャスティングとフォアキャスティングは、決してどちらがいい、悪いというものではありません。
基本的にはバックキャスティングとフォアキャスティングは相反している一方で併用することで効果を産む思考です。どちらか一通りの思考で考えてしまうと、方向性を間違えてしまっても気づくことができません。目的と現状に応じて使い分けることで互いの思考法を補完し、組み合わせて使うことでより大きな効果・最適な行動を生むことができるようになるのです。
バックキャスティングは、フォアキャスティングで設定するよりも高く目標設定されるため、行動が伴うとより高い成果が出やすいと言えます。中長期的な計画を立てる際や、革新的なアイデアが欲しい際には有効ですが、緊急性の高い場合など、短期的な改善が必要な場面には向いていません。反対に、フォアキャスティングは短期的な目標や堅実な改善に強く、革新的なアイデアの創出や長期的な目標には弱いという特徴があります。ビジネスにおけるイメージでいうと、企業全体の将来像はバックキャスティングを軸に大きな目標設定を行い、普段の運営はフォアキャスティングを軸に課題改善に必要なアクションを考える。などといったイメージが想像つきやすいのではないでしょうか。
バックキャスティングで大きな効果を得ようとして新規事業ばかりに着手していると、成功している既存事業の雲行きを怪しくしてしまう可能性もありますので、既存事業をフォアキャスティングで改善しながら、外部環境を分析の上、バックキャスティングでハイリターンを狙う併用思考。両輪でのバランス感覚が大事になります。