顧客体験価値設計 フェムテック徹底解剖
この記事は2021年6月16日に開催したオンラインセミナー「顧客体験価値設計 フェムテック徹底解剖」の内容をもとに作成しています。
コロナ禍によって、人々のライフスタイルが激変したことで、これまでの顧客との接し方にも大きな変化が求められている現在、そのコミュニケーションをどう設計するべきなのか?
今回は生理などの女性特有の体をめぐる悩みに対して、日々新たなテクノロジーや・サービスで解決し、進化を続けている「フェムテック」を顧客体験という視点からセッションします。
最近のフェムテックはデータを取ってセンサーで女性の状態を取ろうという傾向にあったが、一巡したと思われる。データトラッキングというプライバシーの問題における心理的抵抗が強いので、もう少し定性的な顧客の声や女性の声を取ってもう一度解析し直すような正しいヒューマンタッチが必要とされる。特に女性は感性が鋭いとされているためそういう意味でももう一度マーケティングを考え直さないと女性には受け入れられない。フェムテックという観点からも普段の生活に溶け込むようなやり方が必要であると考える。
女性の社会進出に関する変化
オリンピックの影響もあって国際理論で女性の社会進出に関する議論が本格的に行われ始めている。10年後にはワーク・ライフバランスを取る第二世代の45歳以下女性が管理職適齢期になっていくと思われる。
現在では日本の管理職登用は低く、今後さらなる登用を企業が求められていくと考えられるが、そんな中で購買意思決定者であり女性としての健康でいうと”更年期”という1つのハードルを超える年齢に社会進出をしている方たちは入っていくので、そこに対してサービス・商品でどう寄り添っていくのか、今後大きな社会的課題になると考えられる。(平川氏)
女性を中心としたマーケットデザインの必要性
今までは物が売れればいい、買わせればいいという売り方をする時代だったが、購買意思決定者の女性はそれでは買わなくなっている。マーケットデザインを見直す必要があると考えている。
では、そもそもマーケットデザインとは何か。
それは今までの当たり前だったことを当たり前のように捉えるのではなく、もう一度市場そのものを観察して、人々がどういった動機で消費しているのか、サービスを利用しているのかをいわゆる行動経済学的な分析手法を使って今までのやり方、上手く言っていなかった理由を見つけてマーケティングの仕組みを作っていく発想のことである。
まさしく今の日本のマーケットの構造も変わろうとしている。ポストコロナという意味での生活に対する価値観の変化や女性に購買意思決定が強くなっていくというデモグラフィックな変化もある。
それが相まった時に最も分かりやすいのは男性的消費態度より、女性的消費態度に対してどうマーケティングに寄り添うのかが求められる時代になっていく。(平川氏)
変化が求められる日本の製品開発
数年前からやはり技術者や開発者の意向で、自分たち企業が作りたいものを作るというやり方をしていました。そこでしっかりとマーケと連動し、顧客視点でものづくりをすることの重要性を感じていたのです。マーケッターの私としては、HUT(ホームユーステスト)など消費者リサーチをした結果をもとに「顧客のこういった声は取り入れて欲しい」などマーケの立場で開発者へ伝える工夫をしていました。(飯田氏)
女性向けであり女性が購買意思決定である商品ではない、一般的な商材では男性が買うと思い込んでいるメーカーは多いと考える。そこの意識改革を女性のマーケッターが声を出していき、顧客の声を取り込んでプロダクトを作っていく必要があると考えている。(平川氏)
「モノ」から「サービス」へ
昔から言われている、「モノ」から「サービス」へという言葉がここ数年で変わってきている。コト消費ですよね?という雰囲気だけではなく、もっとシビアな事になりそうだと感じています。それは大量生産・大量消費の商品は今の環境問題も含めて、ほぼ許させなくなっている。すなわち売れないものは作ってはいけない。売れるものをしっかり売り続け、必要な数だけ作ることが求められている。
2050年のカーボン・オフセットで0にするという働きもある中で、いかにサービスとして必要なものを必要な数だけ提供して、収益最大化をするかという意味での「モノ」から「サービス」への変化が行われる。
購入時の製品への期待値最大化から、日々のサービス利用での満足度最大化へ変わっていくという事である。(平川氏)
これからの、真の意味での「マーケット・イン」を実現するためには?
世の中にフェムテックとして出されている商品・サービスが本当に女性起点のマーケティングに適した作りになっているのか疑問である。そういった中でプロセスを楽しみたい女性がいて、そこに対して購買後にプロセスを組み込んであげることにより、一層女性を支援することになり得ると考えている。
今の社会で意思決定を含めて女性起点のマーケティングが出来ているかとまだまだこれから努力が必要であると言える。
女性にとってはプロセスも大切。今後は購買過程における顧客体験価値を与え続け、顧客に寄り添うことが、真の意味での「マーケット・イン」であり、女性起点マーケティングの本質と言えるでしょう。(山口)
登壇者プロフィール
一般社団法人サービスデザイン推進協議会 理事 平川 健司
東京大学文学部卒業後,株式会社電通に入社。2001年JR東日本Suica導入普及/提携業務に従事。2011年3月まで電通とリクルートの共同出資会社,株式会社DRUM取締役/最終的に代表取締役としてFelicaマーケティングサービスの企画開発を担当。また2009年よりエコポイント等国の大規模プロジェクトのプロジェクトマネージャーを歴任。直近2021年5月まで、経済産業省・中小企業庁 持続化給付金事務事業/業務執行責任者を務めた。
株式会社しなやかに CEO /戦略コンサルタント 飯田 夕紀子
大学卒業後、ユニ・チャーム株式会社に入社。R&D部門にて商品開発・研究開発を経た後、マーケティング部門にてベビーケア・フェミニンケアのブランドマネジメントに従事。ブランドの戦略立案から実行までを経験し、縮小市場の中、2桁成長など達成。その後はユニ・チャーム全事業横断のグローバル戦略策定などを経て、現在は戦略コンサルタントとして、企業の事業課題に対し、戦略策定から施策の実行までを支援している。
株式会社オノフ 執行役員 山口 祐子
2007年株式会社オノフ入社以降、企業のデジタル広報を数多く手がけてきた。2013年よりウェブ企画制作主体であった同社のマーケティングリサーチ事業の立上げに参画し現在は企業課題に対しマーケティング戦略立案、CXデザイン、戦術実装全般を支援している。
ファシリテーター
株式会社レジェンド・パートナーズ 取締役会長 海老根 智仁
1991年、大広に入社。その後、社会経済生産性本部(現在の日本生産性本部)にて経営コンサルタントとしてキャリアを積み、1999年、株式会社オプトに創業者の一人として合流。2001年同社代表取締役COO就任。2006年、同社代表取締役CEO就任。2008年、代表取締役社長CEO就任。2009年、同社取締役会長就任。
現在は退任し、様々なベンチャー企業への投資や経営に携わっている。
株式会社オノフ 代表取締役 安宅 正晴
2000年にWEB制作会社を創業し、企業のキャンペーンサイト制作をメインに多数手がける。現在は市場の変化にあわせ、リード型広告の制作運用から、商品・サービス購入後の顧客体験価値(CX)の設計運用へと事業を転換。アフターコロナにおいてのコミュニケーションのあり方を見つめ直し、アナログとデジタル双方向でのアプローチを展開する。