実店舗を持つ小売業者向けECサイトは、実店舗との連携を成功させる方法が解説されることが多いですが、本来はECサイト自体が魅力的である必要があると思います。
今回は少し視点を変え、ECサイト自体の魅力を向上させる方法について、解説してゆきたいと思います。
BtoCのECの市場規模は、経済産業省「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」2021年7月の調査によると、2020年の時点で8.08%となっており、この2年で、在宅でECサイトを活用することで買い物を済ませる人は、さらに増え続けています。
実店舗を持つ小売業者がECサイトを持つべき理由は、お客様の利便性向上にありますので、オンラインと実店舗の上手な融合が求められております。しかしながら、オムニチャンネルを完全な形で実現するためには、設備投資やシステム投資も含めて、いろいろな障壁があります。
したがって、実店舗との相乗効果が得られるように、ECサイトを利用する理由を明確にすることが、ECサイトの運営を考える上で最も大切なポイントです。
ECサイトと実店舗の相乗効果を出す顧客体験を設計する
スマートフォンが普及したことで、お客様は、Web上のECサイトで商品の詳しい情報を事前に調べ、サイトでは購入せず実店舗で商品を購入するWebルーミングと呼ばれる消費行動をします。
逆に実店舗をショールーム代わりに品物を確認し、購入は、より安く買えるECサイトで購入するショールーミングなどを上手く使い分けています。
実店舗を持つ強みは、Webルーミングで来店されたお客様に、接客により、商品の価値を伝えることや購買履歴を元に個々のお客様に合った商品を提案するなど、接客を大きな差別化ポイントにできることです。ECサイトを利用する理由を明確にしたサイトの運営を考えてゆく必要があります。
EC店舗をキュレーションする
ECサイトを利用する理由を明確にするために、EC店舗が一番意識しておくべきことが、EC店舗をキュレーションすることです。情報やモノが氾濫している中で、膨大な情報をシンプルでわかりやすくして提供することです。
キュレーションとは、情報を選んで集めて、特定のテーマに沿って編集することで、新しい価値を付与する作業です。「何を選んで良いかわからない」お客様のそのような悩みに応えてあげることができます。
キュレーションすることで、新たなコンセプトを見つけてECサイトを定義します。具体的には、コンセプトを元に商品を選択しながら、商品のラインナップを絞り込み、その品揃えにストーリーを持たせることです。ストーリーとは、なぜこの品揃えなのかが明確になっている理由です。そうしたストーリー性のある品揃えにより、新しい価値が生み出されてゆくのが理想です。
今は、当たり前になりつつある、売れ筋商品ランキングやユーザーのレビュー評価による紹介などはキュレーションされた情報だと言えます。
ECで何かを購入しようと考えた時、お客様には数多くの選択があります。利便性が高く使い慣れた大手のECサイトやショッピングモールを利用すれば、ほとんどのモノが廉価で送料無料で購入できる環境が整っています。
そうした競争がある中で、品揃えを充実させるだけでは、単なる価格競争に巻き込まれてしまいます。ECを利用する理由が、価格の優位性になってしまうと運営を継続することが困難になります。
ECで選ばれる店舗の特徴は、価格の優位性と店舗の信頼性なので、実店舗を持つ小売業者は、店舗を持っていることで信頼感を伝えることができます。いくら価格の優勢があっても、信頼できない(買い物を失敗する心配がある)店舗では購入をためらいますので、その点は優位性があります。
しかしながら店舗がある優位性だけでは、ECサイトを活性化することは難しくなります。今後のECでは、価格以外の訴求方法として、EC店舗をキュレーションすること意識してゆく必要があるのです。そうしたEC店舗運営に必要な力が、仮説力と演出力です。
仮説力と演出力で選ばれるEC店舗を創り上げる
ネットとリアルの両方のチャンネルを持つ小売業者が、大きな差別化を発揮できるのは、自分たちで、お客様のニーズに合わせたオリジナル企画を生み出すことです。そのためには、お客様の頭の中を想像することができる仮説力になります。
よく、検索ワードは、お客様の頭の中にあるニーズやウォンツを表現していると言われることがあります。検索ワードを分析しながら、仮説力を磨くことで、お客様の頭の中にあるニーズやウォンツを発見することができるようになります。
今後、仮説力を活かしてEC店舗が強みを発揮してゆく一つの答えが、地域密着型で商圏の強みを活かすことができるお店です。
地域の強みを生み出すためには、商品群を上手く編集し、新たな価値や意味を生み出すと共に、演出力で売る力を高める必要があります。演出力を高めるためには、ストーリーや世界観の領域で競わないと、これからのECは成長することが難しくなります。
そうした視点で、地元産品は、大きな差別化ポイントになる要素です。その地域で有名なもの、特産品などは非常に強い差別化要素になります。地元であることは、競合には語ることができない切り口になりますので、全国をターゲットにすることができるECを行う際には意識しておくことをお勧めします。
例えば、地域経済の活性化への貢献など、競合他社が言えない付加価値を探して、ストーリーとして伝えることが求められているのです。
スマートフォンファーストで設計する
実店舗を持つ小売業者向けECサイトを成長させるためには、スマートフォンの存在をしっかりと意識しておく必要があります。つまり、スマートフォンファースト(スマホ優先)で画面を設計することです。
多くの消費者は、スマートフォンを使った買い物や支払いは当たり前の習慣となり、いつでもどこでも好きな時に商品の詳細情報をスマートフォンを通して閲覧でき、その場で購入できる便利さを活用しています。
パソコン画面を見て、ECサイトを利用する人の方が少なくなりつつあります。
そうした背景を踏まえて、スマートフォンの画面サイズに合わせて最適化する必要があります。
画面が長いスクロールになることを考慮して、スクロールしながら読み飛ばしても重要な情報は目に入るように設計をします。また画面幅に合わせてボタンは見やすい大きさで、ページ内に幾つか設置した方が利便性が高いです。
コンテンツと顧客との関係性の構築を丁寧にする
コンテンツはより分かりやすいコンテンツが求められます。
短時間で理解できるように分かりやすくするためには、キャッチコピーや見出しが重要になります。また、顔写真やお客様の声を入れることで親しみやすさを感じるコンテンツになります。
シンプルに言えば、購買につながるためには、値段や検討に必要な情報を分かりやすく伝え、今買うべき理由が明確に伝わるように説明文をまとめることが大切になります。
また、ECサイトを成長させるためには、お客様の初回購入日から、2回目購入日までの期間を把握し、この期間ができるだけ短くなるようお客様とコミュニケーションしてゆく必要があります。
一般的には、1回目の購入から90日以上経過するとリピート購入のハードルは上がってしまうと言われていますので、フォローアップのタイミングを決めて、コミュニケーションを深めてゆく仕組みづくりが欠かせません。