【事例紹介】シリアル食品(グラノーラ)製品の新商品開発について
デジタルマーケティングカンパニー・オノフの編集長のためごろうです。
朝の食卓に彩りを添えるグラノーラ。健康志向の高まりを背景に、シリアル食品市場においてグラノーラ製品は急速に成長しました。しかし、競合他社が市場シェア率を伸ばしてゆく中で、新たな差別化ポイントを打ち出しながら売上を伸ばすにはどうすればよいのでしょうか?本記事では、グラノーラを販売するメーカー様の事例を通じて、現状の課題と成長戦略を具体的に掘り下げます。国産素材を活かした商品力の向上や、デジタルマーケティング活用の可能性を探り、競争が激しい市場でどのように成功要因を見つけるための取り組みを行ったかを今回解説します。
グラノーラ市場の現状と課題
日本国内のシリアル食品市場は2023年の時点で約600億円、その中でも主要なカテゴリーの一つであるグラノーラ市場は約450億円と、市場全体の7割を占めていました。前年比105%増という成長率を記録しており、特に健康志向の高まりを背景に引き続き注目されていました。しかしながら課題として、競合企業である大手メーカーは、小売店の棚をほぼ占拠している状況で、新規参入や成長を目指す企業は、どのようにして販売を伸ばしていくかという重要な戦略が求められていました。
事例で上げるメーカー様では、高価格で高付加価値の製品として市場では認識されていたものの、さらなる認知度拡大が必要で、商品力の向上や販売戦略の見直しが売上増の鍵となっていました。今回の事例では、国産製品である差別化可能な要素を活かしつつ、どのように市場でのシェアを拡大するかについて紹介します。
市場分析と消費者意向の把握
自社製品を成長させるための第一歩は、現時点での市場データの詳細な分析と、消費者の意向を明確にすることです。以下の観点でデータ収集と分析を行いました。
市場の成長要因とターゲット分析
グラノーラ市場は主に次の要因によって支えられています。
- 健康志向の高まり
食物繊維やビタミンが豊富であるグラノーラは、朝食やスナックとして健康意識の高い層に人気。 - 簡便性
忙しい現代人にとって、手軽に栄養を摂取できる点が魅力。 - 多様な食べ方
牛乳やヨーグルトと合わせる、スムージーのトッピングとして使うなど、消費スタイルの多様化。
ターゲット層としては、30—40代の女性を中心とした健康志向の消費者や、ミレニアル世代の利便性を重視する層が想定されます。
競合製品(大手メーカー)との差別化
競合他社は、次のような特徴を持つ製品で市場をリードしています。
- カルビー様
豊富なラインアップと全国規模の流通網。 - 日本ケロッグ様
グローバルブランドとしての信頼性。 - 日清シスコ様
コストパフォーマンスの高い製品。
これに対し、本事例のメーカーが強みとして活用できるのは、国産素材とプレミアム感でした。特に、国産素材を使用している点は、品質と健康への配慮をアピールするうえで大きな武器となる要素でした。
消費者ニーズのリサーチ
市場調査を通じて、次のようなデータを収集しました。
- 消費者がグラノーラに求める具体的な価値(例: 味、栄養価、価格)。
- 購買動機(例: 健康への配慮、時短ニーズ)。
- 購入チャネル(例: スーパー、オンラインショップ)。
特に、本事例のメーカーでは自社サイトでの直接販売にも取り組んでおり、ECサイトでの販売を強化するために、オンライン購買層の動向を把握するようにしました。
消費者がグラノーラに求める具体的価値のまとめ
ターゲット層である30-40代女性にとって、グラノーラは「健康」「時短」「利便性」を同時に満たす理想的な商品でした。特にオンラインでは、成分の詳細情報やレビューをしっかりと見せることができる点と、購買動機に繋がる特典を重視する傾向が高いため、自社ECサイトの強化がさらなる売上向上につながる可能性を見出しました。
味
- 多様性と飽きない味
消費者は日々の食事で飽きがこないように、複数のフレーバー(チョコレート、フルーツミックス、ナッツ、無糖タイプなど)を求めています。 - 自然で優しい甘さ
人工甘味料ではなく、蜂蜜やメープルシロップなどの自然な甘さが好まれる傾向。 - 食感の良さ
サクサク感や適度な硬さが、満足感につながります。
栄養価
- 健康志向の栄養バランス
食物繊維、たんぱく質、鉄分、ビタミン類などの栄養素が豊富な商品が好まれる。 - 低カロリー・低糖質
ダイエットや健康維持を重視する層が多く、低糖質タイプやオートミール主体の商品が支持されやすい。 - オーガニック・無添加志向
添加物や保存料を使用しない、自然素材のイメージが高い商品に価値を見出す。
価格
- 適正価格への敏感さ
500円~800円程度の価格帯が主流。少し高めでも「質が良い」と感じられる場合、購入されることもある。 - コストパフォーマンス重視
大容量サイズの展開により「お得感」を提供することでリピート率が向上する。
購買動機
健康への配慮
- 生活習慣病の予防
健康維持を目的に、体に優しい食事選びの一環としてグラノーラを選ぶ。 - 腸内環境の改善
食物繊維が腸活に役立つとされており、この要素が購入理由となる。
時短ニーズ
- 忙しい朝の救世主
牛乳やヨーグルトをかけるだけで簡単に準備でき、時間短縮を重視する女性に人気。 - 持ち運びのしやすさ
小分けパックやバータイプの商品は、外出時のスナック代わりにも好評。
購入チャネル
スーパー
- 利便性の重視
日常の買い物のついでに購入できることから、スーパーでの購入を続ける層が多数。 - 実物を見て選びたい心理
フレーバーや容量を比較するなど、新商品を試す心理が働きやすい。
オンラインショップ
- リピート購入のしやすさ
気に入った商品を定期購入できる点が、時間効率を求める層に魅力的。 - レビューの影響
味や効果に関する口コミが購入の決め手となることが多い。
オンライン購買層の動向
自社ECサイトでの直接販売強化
- 直販のメリット
ブランドの世界観を直接伝えられるため、こだわりを感じる消費者に訴求しやすい。 - 特典の付加価値
オンライン限定の割引やリピーター向けのポイントプログラムは人気がある。
オンライン購買層の嗜好や行動パターン
- 健康意識の高い層が主体
栄養価や成分表を細かく確認する層がオンライン購入の中心。 - インフルエンサーの影響
健康や美容系インフルエンサーのレビューやレシピ動画を見て購入を決める傾向。 - サブスク志向
定期配送サービスに加入し、利便性と継続的な健康管理を行う。
健康志向の30-40代女性へのアプローチ方法
ターゲット層である30-40代女性に向けたアプローチ方法を下記のように検討しました。
- 商品コンセプトを明確化
- 健康特化型グラノーラとして、「腸活サポート」や「美容サポート」を前面に打ち出す。
- オーガニック認証や低糖質表示など、健康意識の高い女性が安心して選べる情報を明記。
- パーソナライズされた提案
- 目的に応じたグラノーラ商品を提供。
- 腸内環境改善用の「食物繊維強化トッピング」。
- 美容効果を狙った「コラーゲン入り」。
- 目的に応じたグラノーラ商品を提供。
- ライフスタイルに合わせた利便性
- 小分けパックや持ち運び可能なパウチ包装で、外出先や職場でも手軽に食べられる仕様を提供。
- 調理不要でそのまま食べられる「スナックスタイル」のラインナップも拡充。
- ブランディングとコミュニケーション
- SNSを活用した「健康志向の共感型コンテンツ」を配信。
- 健康・美容分野のインフルエンサーとのタイアップで、商品を自然に露出させる。
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ミレニアル世代(20-30代)の利便性重視層へのアプローチ方法
ターゲット層であるミレニアル世代に向けたアプローチ方法として、利便性とメッセージ性を強化するために、下記のように検討しました。
- サブスクリプションサービス
- 月ごとに異なるフレーバーを提案するサブスクモデル。
- サブスク特典として、無料トッピングや新商品の試食サンプルを提供。
- エシカル消費に応えるメッセージ
- 環境配慮型のパッケージデザイン(リサイクル可能素材の採用)。
- 「地域生産素材」などをアピールし、社会貢献意識に訴える。
- モバイル重視のマーケティング戦略
- 短時間で商品や特徴を伝える動画広告を展開(Instagram などで配信)。
- ユーザーレビューや写真投稿キャンペーンで、購入者自身がマーケティングに参加できる仕組み。
オンライン購買層全般へのアプローチ
- 直販ECサイトの強化
- パーソナライズ体験の提供
購入履歴に基づくおすすめ商品の提案や、健康目標を入力することで最適な組み合わせを提示。 - サイト限定特典として「ポイント還元」や「送料割引」を提供。
- パーソナライズ体験の提供
- データ活用による精密なターゲティング
- 購買履歴や閲覧データを基に、セグメント化したターゲット層へ適切なメッセージを配信。
- メールマガジンやプッシュ通知で健康・利便性に関連するトレンド情報を発信。
- 体験型プロモーション
- グラノーラを使用した簡単レシピを動画で提供し、商品との接触機会を増やす。
- オンラインでリピーター向けにライブクッキングイベントなどでエンゲージメントを高める。
具体的なアクションプラン
オンライン専用商品の導入
健康志向の30-40代女性やミレニアル世代に向けて、消費者が好みのトッピングやフレーバーをオンラインショップ限定で導入します。これにより、健康目標や嗜好に応じた選択肢を提案し競合との違いを強調します。
サブスクリプションモデルの展開
ミレニアル世代を中心に、月ごとに異なるフレーバーやトッピングの提案を行うサブスクリプションモデルを展開します。定期購入者には、ポイント還元や送料割引といった特典を用意し、長期的な顧客ロイヤルティを向上させます。また、新商品や限定フレーバーの先行試食特典を付与することで、購買意欲をさらに高めます。
短尺動画広告を活用したプロモーション
TikTokやInstagramを活用し、「簡単・健康・便利」をテーマに短尺動画広告を配信します。例えば、忙しい朝にグラノーラを活用するシーンや、カスタマイズのプロセスを紹介する動画を作成し、若年層を含む幅広いターゲットにリーチします。
エシカル消費を意識した商品表示
健康志向や環境意識の高い消費者に向けて、商品のパッケージやプロモーションに「国産材料」「オーガニック」「エコ素材パッケージ」といった情報を明示します。これにより、環境や社会に配慮した選択を重視する層に対して、ブランドの信頼性と共感を高めます。
オンラインキャンペーンの実施
消費者参加型のキャンペーンを実施し、ブランドとのエンゲージメントを向上させます。具体的には、オンラインでの商品レビュー投稿や、SNSでの写真共有キャンペーンを通じて割引クーポンを提供するなど、消費者が自然に商品の魅力を発信できる仕組みを構築します。このようなキャンペーンは、口コミ効果を高め、新規顧客の獲得にもつながります。
具体的な戦略
市場リサーチを基に商品開発
市場リサーチで得られたデータを活用し、以下の方向性で商品開発をご提案。
- 健康特化型グラノーラ
食物繊維やプロテインを強化したバリエーションを展開。 - カスタマイズグラノーラ
消費者の声から生まれたオンライン専用商品。
例えば、ターゲット層の関心が高いテーマに特化した商品ラインを設けることで、ニッチでも新しいターゲット層を獲得します。
自社サイトの活用とデジタルマーケティングの強化
自社サイトを活用し、以下の施策を展開。
- SNS広告の強化
InstagramやX(Twitter)で、国産素材や健康効果を訴求する広告を配信。 - レビュー施策
商品レビューキャンペーンを実施し、レビューを集めることで信頼性を高める。
小売店との協業の戦略
小売店の棚を確保するためには、既存の競合製品との差別化ポイントを明確にし、交渉を有利に進めることが必要でした。商談にオンライン上での販売実績や商品レビューを手持ちすることで、商談を優位に進めることが可能になります。また、SNS上での認知拡大が広まることで、店舗でのお問い合わせを増やし、取り扱いを検討していただける機会を創出します。
サブスクリプションモデルの導入
リピーターを増やすため、定期購入サービスを開始。
- 月額プランを複数用意し、一定金額以上の購入で送料無料。
- 季節限定の新商品を定期的に届けるサービスを展開。
事例のポイント
これらの施策を実施することで、競合他社が優勢な市場においても確実にシェアを伸ばすことが期待されます。特に、消費者ニーズを細かく捉えた商品開発と、オンラインおよびオフラインでの販売戦略の融合が、他社との差別化を生む重要な要素となります。 最終的に、本事例のメーカーでは上記の戦略を実行することで下記の成果を評価指標としています。
- 市場シェアの拡大
高付加価値商品としての地位を確立すること。KPI:ECサイトのサブスクリプションの契約人数の推移とリピート顧客数の推移。 - 顧客満足度の向上
消費者の声を反映した製品とサービスを提供すること。KPI:商品レビューの投稿件数とポジティブなレビューの割合。 - 差別化商品の開発
国産素材を活用し新たな商品開発を実現する。消費者との共創マーケティングを行うことで、ユーザーの声を反映した商品を開発すること。KPI:新商品の開発数と販売数の推移。
これらの取り組みにより、単なるグラノーラを販売するメーカーから、健康的なライフスタイルを提案するブランドとしてのポジションをECサイト上で確立することを目指しています。